▼1日目(10/18)
「2019私の選挙戦レポート」
伊藤正子さん(川越市議会議員)
2期目の選挙。川越市議会議員定数36名中女性議員8名。50名程立候補する厳しい選挙。毎議会終了後議会報告を自ら地域に10,000枚以上ポスティング、「おしゃべりの集い」開催。選挙準備では選挙公報に音声版もあり文字数など苦労し作成。4,000枚の法定ビラは、半分は新聞折り込み、残りは街頭で配布。1期目ママ友中心が、2期目は議員活動で出会った人達が議員活動を評価、再び議会に送り出したいと知り合いも連れての応援も得て当選。
倉田利奈さん(高浜市議会議員)
選挙立候補を決めて選挙戦まで50日しかなかった。中央公民館取り壊し問題に遭遇、市民団体を立ちあげ署名活動し議会に提出も否決された。市の常設型住民投票条例に沿って署名集め実施も、条例の成立条件の投票率いかず開票もない経験を経て市を変えようと決心。市民活動の蓄積であるポスティング体制、協力市民の確立等すべてが選挙に役立った。近隣の市民派議員の支援も受け、議員紹介の記念会・住民参加型選挙ハンドブック通りに実践。
田淵紀子さん(松山市議会議員)
8年暮らした米国から東日本大震災後に帰国、食の安全への配慮から地元松山に。四国の伊方原発稼働に一人で抗議する中、反原発、食の安全等の活動等を共にするママ友が増え国政選挙にも関わる。ママ友と政治活動する中でたまたま自由業の自分が立候補、シンボルカラーは赤。自民党議員不在地域で地域代表と思われた事、SNSを活用した市民派ならではの戦い方をして当選。共に活動してきた後に続く仲間と共に公約実現に向け選挙議員活動中。
報告後の質疑応答で、ツイッター、フェイスブック、インスタ等を積極的に活用した選挙運動が多かった。議会内の女性議員のネットワークは難しいようだが、議会を超えて広くつながる点で努力されていた。議員へのパワハラ等救済の仕組みの不備への指摘があり、今後の課題だと感じた。共通点でとして議員になった事で行政の対応が早い、意見を聞いてもらえる、情報が入る等あった。議員レポートとして発行された印刷物は読んでもらえていると実感。関心があるところに出かけてもありがとうと言われる良い仕事という感想も。最後に報告者より、参画フォーラムに参加して、もっとすごい人がいると感じ、もっと元気な人がいることがわかって元気をもらっている。この会が続いてほしいとの声も出された。これから女性議員が増えると地域も日本も変わっていくという希望が持てる選挙報告だった。
講演「統計と政策―統計リテラシーを高めよう」
上西 充子さん(法政大学教授)
昨今の国会審議では、政府データに対する信頼が地に落ちた感がある。9月末、総務省統計委員会(委員長 西村清彦東大名誉教授)は調査法の公開や統計不正の再発防止を求め「公的統計の質の適切な管理を求める建議」をまとめたという。
こうした事態に対し、正しい政策判断のために「統計」をどう読むかについて、統計の専門家である上西充子法政大学キャリアデザイン学部教授を迎えた。
昨年1月に始まった「裁量労働制データ問題」は、政策目的のために統計が悪用された典型と言えよう。厚労大臣の発言に対し予算委員会では、労働時間の定義を始め、調査の細目の確認、元データの検証が重ねられ、調査のやり直し要求。ついには、法案の撤回とデータの撤回に至っている。「失踪した技能実習生の失踪原因問題」でも同様のデータ捏造が発覚したのは周知の事実。今や、政府は「都合の悪いことはなかったことにする」にまで至っているのが現状だ。
(1)調査と政策の望ましいあり方を例示してみよう
○統計の推移から問題や変化が顕在化→調査・分析→対策
例)片働き世帯の減少と共働き世代の増加
○新たな問題・課題の認識→統計調査・分析→対策
例)取り残されている外国人労働者の子ども
→通学状況や学校の対応の調査→対策
(2)私たちに必要なことは、次の3点と心得よう
① 統計リテラシーを高めよう/データは人を騙すことに注意する。
② 出典を確認し、調査対象・調査方法・調査時期・回収率・
調査項目・定義などを確認する。
③ 信頼できるデータを、出典に戻って確認し、利用する。
2018年に話題となった「ご飯論法」は、都合の悪いことには答えない。はぐらかしの典型だろう。上西氏は、こうした現状をいかに打破していくか明快に語った。著書「呪いの言葉の解きかた」(晶文社2019年)では、私たちの意識下にあって思考と行動を縛る「ジェンダーの呪縛」にも気づかされる。
▼2日目(10/19)
基調講演「若者流入の首都圏は栄え、過疎地は消滅する。は本当か?」
藻谷浩介さん(日本総合研究所 主席研究員)
少子高齢社会を前に、「消滅自治体」なる言葉がメディアに踊った。東日本大震災直後に発足した民間団体日本創生会議が唱えたもので、全国自治体のおよそ半数にあたる896自治体が2040年までに消滅の惧れがあるとした極端な主張である。しかし、それは本当だろうか。地域は分断され、なされるがままかの疑義に、藻谷氏は「事実を見よ」と喝破した。
「『イメージ』や『空気』は事実と違います。常に事実を数字で確認しないと間違えます。さぁ、日本での殺人事件、今は昔より多いか少ないかどちらでしょう。今の方が多いと思う人はグー、昔と思う人はパーを挙げて下さい」……「何と、犯罪白書では1950年代の3,000件超に対し、昨今は1,000件をきっている。これが事実です」
と、聴講者参加型で進行。
では、日本人の多くが持っている「イメージ」に目を向け、その事実を確認し検証する。
では、日本人の多くが持っている「イメージ」はどうか、その事実を確認し検証する。
① 国際競争に負けているため、日本経済はジリ貧だ
→財務省「国際収支状況」では、日本の輸出は20年前に比べ6割増。バブル期の倍以上の外貨を稼ぐ日本が示されている。ジリ貧ではない、これが事実。
② 若者が流れ込む大都市圏は元気だが、地方は衰退し、過疎地は消滅する
→国勢調査結果から「何歳の人口が多かったのか」その分布を検証する。65年前(戦後復興期)、25年前(バブル最盛期)、10年前(リーマンバブル期)、現在、10年・20年・50年後の推計が示すのは、既に15~64歳が激減している事実。さらに、首都圏で増えているのは75歳以上で74歳以下は減少に転じているのがわかる。
→25~39歳女性の就業率と出生率の相関関係を見ると、東京:島根=1.20:1.89。
全国で初めて「過疎地」と言われた島根では、女性就労や子育て政策に邁進した結果、子どもが増え、高齢者は減少に転じて医療福祉負担が減り始めている。
→田舎は、今の医療介護体制が維持できれば何とかなるが、大都市ではいつまでも体制整備が追いつかない。生活保護率では東京都が2.2%とトップで、更に23区は2.4%だが島根は中位以下の0.9%である。(全国平均は1.7%)
公的なデータを次々に引用、グラフ化して分析し考察を加えた藻谷氏の主張は、私たちの思考回路がいかに時代の変化に追いついていないか、「良い大学を出たら生涯安泰」という昭和の価値観から脱却できていないかを突き付けるものであった。(鈴)
カレントトピックス「参院選後の日本の政治-民主主義のゆくえ」
宇野重規さん(東京大学社会科学研究所教授)
1.参院選の結果について
与党改憲定数の過半数を獲得、他方野党共闘による10選挙区での勝利で憲法改正発議に必要議席獲得に至らず。二人に一人が投票しない低投票率、特に若い世代の低投票率が問題。
2.代表民主主義への疑い
世界価値観世論調査によれば民主主義を信頼しない人が世界的に増加傾向、特に若い世代は圧倒的に少ない。戦後民主主義を支えた三つの条件喪失
①スマホで個別ニュースの取り込み、いい加減なことも言ったもの勝ち。新聞は期待されず読まれていない。フェイクニュースを抑制し共通の情報をもたらしたマスメディアがスキミング機能喪失。
②好景気で生活条件向上時は再配分が機能し民主主義が発展。低成長時はリスクと負担の議論になり未来への期待が低下。
③日本も100人に3人は外国籍、多様な民族が増え同意性が薄れ、分断され民主主義が困難な時代に。
3.争点の曖昧化とイデオロギー的座標軸の混乱
マニュフェスト政治の後退。世論調査で保守革新の意味が変化、共産を保守、革新は自民、維新の会が定着。50歳以上が分水嶺、30代になると逆転。憲法改正が革新、変えないのが保守、戦後体制変更が革新。戦争体験の共有化が重要。戦後的価値を次世代に伝え経済的方向性の明確化を。
4.民主主義のゆくえ
世界が不安定化、世論の分断化をいかに食いとめるかが課題。立場が違う人と暮らすのが民主主義。共に社会に暮らす感覚を取戻し、「税と社会保障」を共通の場で議論の積み上げ。場としての政党の発展と多様な議論を収斂、地域を変えていくうねりを結集し最後に民主主義を変えていくことが大事と結んだ。
講演後に、女性政策、地域政治等々多くの質問に対して、女性政策の基本に経済をおく発想が誤り。地域レベルで考えリアルに話す場が必要。努力しないと民主主義は空洞化。国政をいじっても変わらない。地域から変え連動させ国会議員に圧力をかけるべき等々。最後にテクノロジーの進化とリアルな人間関係と議論の場の共有が重要。民主主義はジグザグするが、最終的にはネットを含め民主主義は成長していくと信じたいと語った。
冒頭、民主主義に関する本に「民主主義を救え、声を上げること、勇気、逃げてはいけない」民主主義が暴力ではなく内側から崩壊していくとの話。民主主義を救うのは他でもない。私達自身の生き方だと気づかされた。(大)