1. 基調講演「 女性支援法施行の意義と課題―地方自治体の役割を問い直す」
戒能 民江さん(お茶の水女子大学名誉教授、女性支援法推進を促進する会会長)
◆女性支援法の意義
女性支援法は1956年に制定された売春防止法第4章「保護更生」及び第3章「補導処分」を切り離して、女性支援の新たな枠組みを構築したものである。売春するおそれのある女性を「保護」して「更生」させるという旧「婦人保護事業」の制度的限界を改め、一時保護以降の自立支援に対し法的根拠に持つ。
◆なぜ女性支援法が必要か
法の第1条は「女性が女性であることで様々な困難な問題に直面する。日本の社会では、女性の人権尊重と安心して自立した生活実現のためには女性支援法が必要」と規定している。最も支援が届きににくいのは、複合的な困難に直面している若年女性である。最近まで行政の取り組みは弱く、数少ない民間女性団体が支援を担ってきた。
支援が必要なのは、若年女性のみならず、孤立や貧困問題に直面している中高年女性、障害や外国籍など複合差別に直面する女性達もいる。DV被害者も背景に複合的な困難を抱えている。因みに日本には性暴力被害者支援法がない。
◆女性支援法のポイント
困難を抱える女性の定義は「困難な問題を抱える(そのおそれのある)すべての女性」でありDV被害者支援施策にとどまらず、支援の対象範囲の拡大している。縦割りを打破した行政の連携協働体制による支援のコーディネーター役が求められている。
基本理念は人権擁護、男女平等の実現を掲げ、当事者中心主義の支援、民間と行政の協働による支援を掲げている。
支援内容はアウトリーチ・居場所の提供を行い、個別の支援を重視して被害からの回復支援に加え日常生活の回復支援を行う。
◆女性支援法をめぐる動向
厚労省は施行後3年を目途に女性支援法の見直しを行う。本人の秘匿性の有無に関わらず、一律に厳しい生活制限を課し、個別の状況に応じた支援をしていないため一時保護施設の入所率の低下が生じている。秘匿性の有無で支援の場の分離や地域での自立生活の促進を図るため見直しが検討されてる。
内閣府男女共同参画局は第6次男女共同参画基本計画策定に当たり、女性支援法関連は一言の言及があるのみ。内閣府と厚労省の縦割りの弊害がでており、市区町村の男女課と福祉課の連携への悪影響が懸念される。
◆市区町村の基本計画策定
基本計画は市町村の女性支援施策の具体的な実施に関する計画である。現実を把握し、行政だけで策定せず、支援現場・市民も加わった検討委員会等報告書に基づく素案策定が大切。実態調査、ヒアリングの実施、男女系と福祉系の協働が必要である。
基本計画の類型として、①単独型、②一体型(男女基本計画、DV基本計画、女性活躍基本計画等との組み合わせ)、③関連型(単独型だが男女計画等と関連する計画としての性格を持つ)がある。
-
単独型の例として、熊本市と大阪市の例をあげ、熊本市は、国の基本計画にない居場所機能に一時避難の場を設けるための問題提起をしている。(計画は福祉系が策定)
大阪市は一時保護施設について秘匿性の有無で、施設の選択可能な施設運用のあり方や、加害者プログラムの開発を行い国に対する問題提起をしている。(計画は男女系が策定) -
一体型として練馬区は、男女共同参画計画の基本目標(大項目)に女性支援を入れている。緊急一時保護後のミドルステイとして、緊急一時保護施設を利用した、すまい、見守り、相談一体型の支援を行っている。(計画は男女系と福祉系で策定)
基本計画策定のメリットは、予算に基づいた女性支援の具体策を推進、地域の実態を把握し、問題提起の場になる。
◆まとめにかえて
行政の取り組みの課題として、女性支援相談員の人員増と専門性の強化、待遇改善を図ること。民間支援団体の位置づけ、行政との協働、財政支援を図ること。
行政の姿勢として、困難を抱える女性たちを支援から遠ざけ、不利益をもたらすことがあってはならない。たどり着けない女性たちへのアプローチ、被害回復、生活再建、自立支援のための中長期的支援体制の整備も必要。(田中和子)
2. 講演「私の意思を」尊重した支援とは~官民協働の支援の必要性~
吉田徳史さん(国立市役所政策経営部市長室長)
1.国立市の女性支援の条例
国立市は、人口7万6千余人。かねてよりソーシャル・インクルージョンのまちづくりを進め、人権に配慮した条例を次々に制定している。
2016年:「国立市 誰もがあたりまえに暮らすまちにするための『しょうがいしゃがあたりまえにくらすまち宣言』の条例」
2018年:「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」
2019年:「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和まちづくり基本条例」
2.国立市の女性支援の特徴
その中でも、同市が全国から注目されているのがタイトルにもあるように「女性支援」が、市の担当部門だけでなく、「民」である市内の民間団体【①(株)シーズンプレイス ②NPO法人Jikka、③NPO法人メンタルケア協議会等】と密に連携している点だ。
また、「官」の部分も「女性支援の仕組み」が政策経営部・市長室に置かれていることが他市町村に先んじている点である。市長室には、通常の秘書・広報だけでなく、女性支援の担当として「人権・男女共同参画・平和を担当する職員(5名)、女性支援専任職員(4名)が配置されており、市長の肝いり施策であると同時に「職員全体に女性支援が見えている」効果を発揮しているという。
さらに、女性相談支援員は、母子・父子自立支援員とは支援の視点が異なるため兼務しておらず、相談の入口から支援まで一貫して関わり、ワンストップで課題を整理して庁内調整し、そこから支援に繋げている。
3.行政における課題
1)DV等により、自宅からの避難が必要な場合は公的な一時保護施設への避難が選択肢となるが、現状では通勤や通学等の外出禁止や携帯電話等の使用制限がある。また、トランスジェンダー女性は入所が困難であるなど、一時保護施設を選択できないケースがある。
2)困難女性の自立には、長期間の継続的な支援が必要とされるケースが多いが、女性相談支援員やケースワーカーは緊急的な避難に追われ、中長期的な支援に時間と人員がさけない。
4.課題克服のために「民と連携」
市への相談支援件数は年々増加し、令和6年度は1,549件でコロナ禍前に令和元年の505件から大きく伸びているが、以下の民間団体との連携があることで具体的な支援で課題が克服できている。
*くにたち男女平等参画ステーション:JR国立駅高架下の「くにたち・こくぶんじ市民プラザ内にあり、女性支援全般、ジェンダーやLGBTQなどの性別に関連する相談を担っている。
*NPO法人Jikka:行政にできないことを民間が支援する考え方のもと、市やJikkaが所有する一時住居や市外のホテル等短期宿泊施設を提供し、中長期の自立が必要なケースには市とJikkaのスタッフが同行支援を行っている。
*NPO法人メンタルケア協議会:2021年から始まった「女性DVホットライン」を担当し、夜間休日の電話相談に応じている。(鈴木規子)
3. 講演「 困難に直面する女性とのかかわりから見える必要な『手』」
門間尚子さん(特定非営利活動法人ミア・フォルツァ代表理事)
門間尚子さんは、実に様々な仕事とボランティアをパワフルに活動している。仕事は、主に法務省、自治体、NPOの困難な状況にある女性やこどものサポート・女子少年院での授業とカウンセリング・中学校から大学等での授業や講演。ボランティアで・暴力に遭ったこどもと女性のサポート・女性とこどもに関する相談対応・こどもや女性を応援する団体の応援等。
他にも審議会等の委員、民生委員、保護司等公的仕事も務めている。スウェーデンを視察、NPO法人・ミア・フォルツァを立ち上げる。人権の尊重と擁護に基づく子どもと女性のためのシェルター事業は、全員がボランティアで24H体制。こどもと女性の相談は、メール・電話、オンライン、対面での個別相談も対応し、PTSDのケア、発見・相談から一時保護、自立支援までを包括的・継続的にサポートをしている。「気づいたらやっていく」「出来ることはやっていく」がモットーで、「こどもたちの声や女性たちの助けて」を事業化。ひとり親世帯のために食料提供するフードパントリー事業、「こどもの居場所」「女子の居場所mia room」、同行支援・家庭訪問・夜間オンライン相談。また、団体・活動者から生まれた事業として、助成金申請講座・担い手育成講座・大学生交流研修がある。
更に、小中学校で月に1~2回相談を受け、その際、地域の人たちの相談にものっている。
インターネットでの窓口をたくさん持っておくこと。大学の中では、若年女性の居場所を運営している。傷つきからの回復の道のりは、緩やかな螺旋(らせん)階段を歩んでいくので、長期の応援が必要となる。「生きるために必要な5つの力」は、安心感・信頼関係・愛情・セルフコントロール・自尊感情であるが、DVや性被害は、これを壊してしまう。
「女性や子どもを応援する4つの柱」は官民連携で、人権を基盤とした予防教育、切れ目のないサポート、サポートを通して得た声の集積を調査・政策提言の発信、担い手育成である。
すべての活動は、地続きであり、その解決には、お互いを知る・お互いを尊重する・目指していることを共有し、ともに目指す姿勢を新たな協働・連携とする事が必要である。
同じ地域や国に暮らす私たちだからこそできることや「困難」は、いつでも私たちの社会に存在しているということ。そして、どんな状況においてもどんな困難に直面しても、いつでも、あなたにも わたしにもちからがある、との強いメッセージを送られた。
門間さんの、多種多様なエネルギッシュな活動に驚かされ、そのエネルギーはどこから生まれているのだろうか。(青木美智子)
市川房枝政治参画フォーラム 女性の人権をまもる「女性支援法」を自治体政策の中心に!
| 日時 | 2025年10月25日(土)10:00~16:15 |
| 会場 | |
| 講師 |
▽基調講演 女性支援法施行の意義と課題―地方自治体の役割を問い直す お茶の水女子大学名誉教授、女性支援法推進を促進する会会長 戒能 民江さん ▽講演 「私の意思」を尊重した支援とは~官民協働の支援の必要性~ 国立市政策経営部市長室長 吉田徳史さん ▽ 講演 困難に直面する女性との関わりから見える必要な『手』 NPO法人mia forza 門間尚子さん ▽16:30~17:30 交流会(自由参加・要予約・茶菓代500円) |
| 参加費 |
現職議員12,000円・現職議員以外5,000円 〈音声(CD)受講:1コマ3,000円+送料〉 |
| 定員 | 約40名(要予約、受付先着順) |
| 申し込み方法 | フォーム、メール、FAX、電話でお申し込みください。 |
