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女性展望カフェ「祖父 尾崎行雄、祖母 尾崎英子テオドラ、母 相馬雪香の教え」原不二子さん((株)ディプロマット社長)

「憲政の神様」と言われた尾崎行雄(咢堂)を祖父に持つ原不二子さんが今回のゲスト。祖母は日本のおとぎ話を英訳して世界に発信したテオドラ、母親は難民を助ける会などを立ち上げた相馬雪香。一世紀にわたる貴重な家族写真などをパワーポイントで紹介しながら、それぞれのエピソードを語った。
漢学、和学、英語学を学んだ祖父行雄は、幼少時に高崎の刑場で「問答無用」と処刑された様を見て、言葉の力、議論、対話で社会を変えていくべきだと思うようになり、明治10年には『公會演説法』を翻訳出版したという。
日本人の父親と英国人の母親の間に生まれた祖母テオドラは、娘雪香にフェアネス(公平さ)とライチェスネス(正義感)の大切さや、目と心を世界に向けることの大切さを教えた。
また、敗戦の年の4月、満州から乳飲み子を含め4人の子どもと無事帰国した母雪香は、それまで北に向かって飛んでいた日本の飛行機がある日消え、物資も出回るようになったことから日本軍の南下を察知し、引き揚げのタイミングを直感したという。その母からは「できないと思っても、頼まれたら断らないこと(God knows you can do it!)」を教わったと。
原さん自身は母譲りの語学力で数多くの国際会議通訳のキャリアを重ね、コミュニケーション手段としての言葉にはとくに厳しい。チャーチル英首相が「日本が戦争に負けたのは言葉のせいだ」と言ったことを引用し、日本語の曖昧さが問題を生んでいると指摘した。また一強他弱の現在の政治状況を憂い、「祖父は帝国議会で唯一の野党だった。私たちは野党を育て、政権交代によって健全な政治が行われるようにしなければいけない」と投票することの重要性を呼びかけた。原さんは尾崎行雄記念財団の理事も務め、昨年あたりから憲政記念館取り壊しが取り沙汰されていることについては、三権分立の象徴である前庭の時計塔と、議論をする場としての講堂はぜひ残してほしいと訴えた。 この日は、市川記念会に所蔵する来信などの史料や写真も展示し、参加者に好評だった。