ゲストは元読売新聞記者の北村節子さん。駆け出し記者時代の1973年、日本の女子隊にネパール政府が75年春のエベレスト登山許可を出したという外電短信を見つけ、女子隊を訪ねた。そこで田部井淳子さんと出会ったのが縁で、このエベレスト登山隊に加わり、以後いくつもの世界遠征を共にした。
8,848メートル、世界最高峰エベレストの世界初の女性登頂者であり、世界初の女性7大陸最高峰登頂者の田部井さんは、39年福島生まれ。豊かな自営業の末っ子に生まれ、昭和女子大卒後に山岳会に入り、69年女子登攀クラブを設立した。その時の合い言葉は「女性だけで海外遠征を」だったという。
厳しい山に挑戦する田部井さんはじめ隊員や、地元のシェルバーたちの姿、美しい雪山などの写真を紹介しながら、田部井さんが次々と目標を設定して飽くことなく高峰登山に挑戦し続けたことや、疲労困憊の隊員のために有り合せの材料でコロッケを揚げてみせたと、「オカアサン力」全開の素顔も語った。東日本大震災の翌2012年、がん発病後も東北被災高校生を励まそうと、一緒に富士山に登った。今この活動は田部井さんの家族らに引き継がれているということだが、女性だけでなく中高年にアウトドアライフの楽しみを伝え、いつも時代の波がしらにいたと、親愛の情をこめて語った。
参加者の中には「山ガール」の姿もあり、昨秋亡くなった田部井さんの笑顔を思い出しながら、北村さんの軽妙な話に聞き入った。