連続講座⑤「分断される世界と女性」講師:林陽子さん(弁護士)

林陽子さんは弁護士で、女性に対する暴力や差別の問題に取り組んできた。

2006年より国連女性差別撤廃委員会委員、15~17年同委員会委員長を務めた。「国連婦人の10年」(1976~85年)で掲げられた「平等・開発・平和」の課題について、世界的な女性の状況を報告した。 まず「平等」については、女性差別撤廃条約採択以降、女性の権利は進歩と後退の両面が見られたとした。現在、国内で格差が広がっているが、これは国家の政策によって生じたものであり、「政治の後退現象」であるとイタリアの研究者の言を紹介。その結果、政治の素人である資本主義エリートが台頭し、これはまさに今フランスで起こっている現象だが、女性の権利運動に与える影響も見過ごせないと述べた。

 

「開発」では、ミレニアム開発目標(MDGs 2000~2015年)の中で最も達成できなかったのは妊産婦死亡率の削減だった。そして新たな持続可能な開発目標(SDGs 2015~2030)には、従来の南北格差だけでなく各国内での格差を問題だとする視点や、日本のODAを中心に、地球上の全ての人が健康保険にアクセスできるように取り組むユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(万人のための医療制度)が含まれていると語った。

 

「平和」では、ジェンダーに基づく迫害を難民申請の理由とする提言を女性差別撤廃委員会が行ったことや、「女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議第1325号」(2000年)が採択され、日本では15年にこれを履行するための国内行動計画が策定されたと述べた。また国境を超えて「平和への脅威」が増し、世界中でODAの12倍の金が軍事費に充てられている現在、女性たちがこれにどう立ち向かっていくかが大きな課題だとした。

 

最後は、日本の政治に何が必要か(何のために女性議員を増やすのか)、どのような制度・仕組みが必要か。法案や予算案のジェンダー・インパクト検証のため国会にジェンダー平等委員会を常設する、行政・政府から独立した国内人権委員会を設置する、最高裁への上告理由に「条約違反」を入れる、ほかの提言を語った。 【詳細は「女性展望」11-12月号掲載