連続講座⑦「ポピュリズムの波とヨーロッパ選挙年」講師:小川有美さん(立教大学教授)

講師の小川有美さんはヨーロッパ政治論が専門で、前日本比較政治学会会長。現立教大学法学部教授である。

 

ポピュリズムは19世紀末アメリカに生まれた「ポピュリスト党」を通じて広まった言葉で、第二次大戦後のアルゼンチンのペロン大統領によるペロニズムもその中に数えられてきた。近年ポピュリズムの波がはっきり現れたのは2014年の欧州議会選挙で、その議会に選出された代表のうち、ポピュリスト政党のメンバーはギリシャ約4割、イギリス、イタリア、デンマーク、フランスが各々約4分の1強だった。 では、ポピュリズムとは何か。千葉大学水島治郎教授、米ジョージア大学カス・ムッデ准教授らの言説を引いて、ポピュリズムとは「デモクラシーという品のよいパーティに出現した泥酔客」(水島)、「純粋な人民と腐ったエリートに分ける中心の薄いイデオロギー」(ムッダ)だという。ポピュリズムへの評価は学者の中でも分かれるとして、違いや異論を認めない人たちだという批判や、逆に今まですくい取られなかった人民の怒りの表明だという期待もあると述べた。

 

ヨーロッパで出現しているのは急進右翼ポピュリズムで、こうした勢力は新党をつくっている。政策的に新自由主義、実力主義。失業や町の治安悪化、学校教育の荒廃は外国人が増えたからだという外国人嫌い。既得権益や国際化ばかり進めるエリートに対する庶民の憤りをもって自分たちは抗議をすると主張する。先駆者はオーストリア自由党のヨルク・ハイダーで、「オーストリア ファースト」と最初に叫んだのはこの党であった。このオーストリア自由党の成功と限界について述べた後、ヨーロッパ各国の選挙結果や現状について、詳細な報告が行われた。

北欧の新右翼は、福祉国家のメンバーシップを「生粋の国民」に限定する福祉排外主義をとる。一方、イギリスではEU離脱52対残留48でEUから抜けるという大きな選択をした。年齢層によって離脱賛否の割合は異なるとも言う。

 

ドイツで今メルケルを悩ませているのは難民問題である。メルケルは2015年に難民の受け入れを表明。その後急激に難民の数が増えたため、安泰だった支持率が37.4%に低下したが、ライバル社民党の不振もあり結果的には勝利した。右翼政党AfD(アーエフデー)は、メルケルが移民難民に寛容すぎると主張する政党で、得票率13%で第3党に躍進。社民党との連立を止めたこととAfDの台頭とによって、組閣が難航しているのが現状である。 様々な混乱を経ながら、ヨーロッパの政党は再編に向かっているのではないかと唱える政治学者もいるが、危険な変わりもの、「泥酔客」のようなポピュリズム政党は、主流化を目指しながらも今のところ限界がある。政権を取ることは難しいし、政権に入っても長続きしない。泥酔客が凶暴になってデモクラシーを壊す場合があるだろうか。

政治学者篠原一さんの言葉「危機の時代には、ふと未来が顔を出す」を紹介し、どういう時代が待っているだろうかと問うて話しを閉じた。