連続講座⑩「昭和・平成、そして新しい時代へ」講師:保阪 正康さん(ノンフィクション作家・評論家)

保阪正康さんは日本文藝家協会・日本ペンクラブ会員で、「昭和史を語り継ぐ会」を主宰。ノンフィクション・評論・評伝など多数の作品を発表している。


昭和は62年と2週間、平成は来年4月、30年3カ月で終わることになった。その流れの中で私たちが考えるべきことは何なのかを整理してみたいと話の口火を切った。昭和のキーワードは3つ、「天皇」「戦争」「国民」。


大日本帝国憲法の下で国体(君主制)の下に政体(軍事主導体制)があり、天皇が神格化されていた時代には、国民は天皇の臣民であり赤子(せきし)であった。皇統を守ることこそ天皇の目的であり、戦前までは戦争も皇統を守る手段だった。日清・日露戦争、日中戦争から太平洋戦争という歴史の中では、国民は天皇のために死ぬことを求められていたのだとする。


1945年8月、昭和天皇は人間宣言をし、国民は臣民ではなく市民になった。平成のキーワードは「天皇」「政治」「災害」。昭和が終わり今上天皇が即位したときのお言葉は、「私は日本国憲法を守りこれに従って天皇としてのつとめを果たします」というものだった。政体の下に天皇制を置き、民主主義体制があって私が存在するのだと言われたことは、大事なことである。2016年8月8日に出されたビデオメッセージは、ある意味で天皇の現実を大きく変えるという意思のある変革のメッセージだと思う。それは今までのどの天皇も使わなかった言葉、「個人として」の5文字にも表れている。国民が象徴天皇というものに共鳴、共感をしてほしいという思いと、追悼、慰霊に代表されるような「戦争の清算」を行いつつ、「象徴天皇」という道筋を自らが作ってきたことを、「皆さんはどう思いますか?」と、天皇は国民に問いかけているのである。それに対して私たち国民は何らかの意思表示をする必要があると述べた。


「災害」については関東大震災に遡り、朝鮮の人たちや社会主義者の惨殺など、情報閉鎖集団にルーマー(噂・風説)が入れられたときに起こり得る恐るべき現象について述べ、災害は人災でもあると指摘した。私たちの倫理や常識を守るために、情報閉鎖集団であることは絶対に避けなければいけないと力説する。
「政治」の問題点は小選挙区制によって生じた政治の劣化である。ファシズムはデモクラシーの後をずっと影のようについてくる。ナチスがそうであったように。私たちは平成の政治は恐い方向に向かっているということを意識し、ここだけは許さないという線をひいておくかどうかというのが大事であり、昭和史に学ぶべきことだと述べた。


天皇という名によって変わる元号は、文章で言えば句読点である。句読点を打ったときにその時代を考える必要があり、今打った句読点はどういう文章に繋がるのだろうと考えていくとわかりやすいだろうかと語った。