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ジェンダー平等サロン「一億総活躍社会?―「男性」や「地方」をめぐる男女共同参画」海妻径子さん(岩手大学准教授)

講師の海妻径子(かいづまけいこ)さんは、思春期の心の「もやもや」が「女であること」に起因することに気づき、女性学講座の開講された80年代中葉の大学で、女性問題の研究をはじめたジェンダー研究家。男女雇用機会均等法が制定されて以降の、「これからは女性が活躍する」と言われた時代から、一貫してジェンダー平等社会が、「男性を巻き込んだ」形で、どのように編成されるか、ウォッチし続けている。

 

以来30年をへた今日の社会で、未だに、その「もやもや」感を引き起こすジェンダー問題は、ほとんど解消されず、逆にグローバリゼーションが進展する中で、それぞれの地域で多様な形で表出する女性問題が、十分認識されないまま放置されている現実を指摘した。そして、各地域に設置されている女性センターなどが、地域に固有の女性問題を掘り起し、調査することの必要性を説かれた。

 

さらに、ジェンダー平等社会に必須の「男性の意識変革」への取り組みが、当初のメンズリブや、ファザリング・ジャパンなどの草の根の社会運動から、昨今の「育メン」「育ボス」キャンペーンなど、少子化対策の国策へ「ガラパコス」化している現実を批判した。そして北欧をはじめフランス、ドイツ、アメリカ、さらには、第三世界の事例を紹介しながら、男性が「ケア」にかかわることの意味が、単に「国の発展」やジェンダー・ジャスティスのためではなく、脱暴力など「男らしさ」の再構築にあることを強調された。

 

最後に、諸外国と比較して日本ほど男性が「男性であるがゆえに」雇用の面で優遇されてきた国はなく、それが日本の男性の意識変革の阻害要因の一つになっているのではないか、と疑問を呈された。なぜなら、人が、人間として何かをすとき、最後に残る仕事は、「ケア・ワーク」であり、欧米諸国で、そして第三世界で雇用の機会を失した男性が、「ケア」の経験をとおして、伝統的な男性意識から脱皮していく現実を看過できないからである。