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緊急特別講座 アベノミクスはいかに危険か 講師:金子勝さん(立教大学大学院特任教授)

講師の金子勝さんは経済学、特に財政学・地方財政論が専門で、法政大学教授、慶応大学教授を務め、現在慶応大学名誉教授。

初めに①出口のないネズミ講と3つのポピュリズム ②戦後自民党レジーム―新自由主義と歴史修正主義 ③破綻シナリオ ④オルタナティヴと4つのテーマをあげ、今、日本の産業が急激に衰退しており、それは1990年代の不良債権処理問題が原因であること、今後破綻のシナリオはどういう形で起きるのかなどについて話したいと述べた。

 

日本銀行(日銀)の買い上げた国債は、遂に470兆円(2019.3.20現在)に達し、日銀の総資産約550兆円はGDPを超えた。財政赤字で国債が増える。市中銀行の持つ国債を日銀が買い、銀行は国債を売ったお金を日銀当座預金に預け金利を得る。つまり、日銀は0.1%の金利を銀行に払い続けることになる。

アベノミクスの金融緩和政策は、当初は2年で2%の物価上昇が実現し、インフレになって物価が上がり、緩やかに経済が好循環を繰り返して消費が盛り上がり、経済が回復するはずだった。しかし6年も続けて日銀は国債を大量に買い込み、買うことを止めた途端に国債の価格が下落して金利が下がり損失が出るため、売るに売れなくなる。このような循環を金子さんは「ネズミ講」と言う。

 

経済衰退の原因となった不良債権処理問題について、同様な問題に北欧諸国がとった政策を紹介した。財政赤字によって給付削減になる福祉、教育、貧困対策等を全て国有化して地域で行う分権化を進め、その結果女性の雇用が進んだという。他方安倍政権は、「バラマキのポピュリズム」として秘書官政治に陥っている内閣の実情を、「ごまかしのポピュリズム」では一億総活躍、女性活躍、働き方改革など次々とスローガンを変えて、何1つ達成していない状況を、「無力化ポピュリズム」では誰が反対しようと辺野古への米軍基地移設を進めるなど何事も強行する姿勢を批判した。

 

続いて「財政赤字と名目GDP」「有効求人倍率の推移」「貿易収支の推移」等をグラフで図示しつつ日本経済の現況を解説、これから起こり得る破綻のシナリオを述べた。バブルが崩壊した時、日銀は機能マヒになったが、それは日銀が債務超過に陥ったためである。日銀が額面よりも12兆円高い価格で国債を買っていることは、公式統計でわかることであり、このことは本来政府が赤字を埋めるべきところを、日銀が国債を意図的に高く買うことによって財政赤字が日銀に付け変わっているということを示している。即ち日銀は国債が満期になるたびに12兆円の損をこうむり、これが日銀が債務超過に陥る原因である。金融緩和政策も限界に来ている。当面見えるシナリオはよどんだ不況がやってくるということだという。

 

今夏の参院選にも言及した。公文書や統計の改ざんによって、ひどい不正も政策の失敗も見えなくなってしまう。2011年東日本大震災の原発事故についてのデータも改ざんだったことがわかっている。歴史的事実を改ざんするだけでなく、現在起こっていることさえ変えていくのが歴史修正主義である。戦後の自民党のレジームは、限界に来たのだ。公正なルールを取り戻すためには参院選で与野党が逆転するしかないと述べた。

 

これからの日本は新しい研究開発にどう向かうか。ドイツのシーメンスの太陽光発電をあげ、原発は時代遅れであるとエネルギー転換を提案した。そのために必要な情報通信やAIの開発のためには、一企業ではなく企業横断的にオープンプラットホームを作って取り組むべきである。1個1個は小さくてもネットワークを作ってでできることであり、エネルギーだけでなく社会福祉も分散型にしていくこと。経済を我らの手にと語った。

最後に再び日銀の国債問題に触れ、財政赤字を減らすためには日銀の買った国債を少しずつ縮小していくべきだと、具体的方策を提示した。