· 

2020連続講座「『辺野古』県民投票の民意とこれから」講師:元山仁士郎さん(「辺野古」県民投票の会元代表)

元山仁士郎さんは1991年普天間米軍基地のある沖縄県宜野湾市に生まれ育った。大学(ICU)入学を控えた東京で東日本大震災による地震に遭う。福島原発事故に衝撃を受け、そこから政治、基地問題に目を向けていく。沖縄に帰る度に基地騒音の酷さに改めて気づかされることにもなった。学部時代にSEALDsに参加し、SEALDs RYUKYUを立ち上げる。2018年4月「辺野古」県民投票の会(代表)を設立し、県民投票の実施を求めてハンガーストライキを行った。現在、一橋大学大学院博士課程に在学中(国際関係学専攻)である。

 

はじめに4つの問いを挙げた。①日本に「民主主義」はあるのか。私たちは何を/どのような価値を大事にしていくのか。②なぜ沖縄は二度も県民投票をやらざるを得なかったのか。③沖縄に「連帯する」とは何か。④基地は軍事的に沖縄でなくても良いにもかかわらず、なぜ政治的に沖縄なのか。 

 

この問いの背景を知るために沖縄の歴史的経験を辿る(沖縄の経験は黒人や女性への差別にも共通すると見る)。1609年薩摩侵攻、「琉球併合」(琉球“処分”でなく。廃琉置県)、人類館事件、沖縄戦、戦後の占領、1972年日本復帰/沖縄施政権返還、95年「少女暴行事件」。事件後、翌96年日米地位協定の見直しと基地の整理縮小を求めて第1回県民投票が行われ、9割近くが賛成した。普天間飛行場移設問題も浮上した。2013、14年以降(15年県知事選で翁長氏が選出)沖縄は辺野古新基地建設に反対の意思を示してきた。にもかかわらず、それが尊重されてこなかった。選挙だといろいろな争点がある。そこで、沖縄県民投票は県民の意思をシングル・イッシュー(一つの争点)に絞って明らかにするため取り組まれることになった。

 

2018年4月16日に創設された「辺野古」県民投票の会は、県民投票条例の制定を求めて署名活動を始める。法定必要署名数2万3171 筆(県有権者の2%) を大きく上回る約10万筆を集め、県に直接請求を行って条例が成立した。だが5市長(宮古島市、宜野湾市、石垣市、沖縄市、うるま市)が不参加を表明し、これに対してハンガーストライキに入る。その結果、条例改正により投票用紙に「賛・否」の他に「どちらでもない」を加えることで投票が実現した。19年2月24日「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立て」に「否」を選んだのは7割を超える人々であった。

この運動で主な担い手となった若者たちは離島など各地域に赴き、多くの人々に会い、その言葉に耳を傾け、対話を重ねた。それは意見の異なる人々、世代の異なる人々の間に橋を架け、互いを知って沖縄の共通課題を探る試みであった。

 

しかし、政府はこの県民投票の翌日から辺野古の海への土砂搬入を再開した。世論調査では県民投票の結果を支持するほうが多い。1)政府の辺野古沖埋め立て工事の方針に「賛成」36%「反対」47% (19年2月NNN・読売新聞) 、2)県民投票の結果を「尊重すべきだ」68.7%「尊重する必要はない」19.4% (同年3月9日・10日共同通信)。一方、当時の岩屋防衛大臣は「沖縄には沖縄の民主主義があり、しかし国には国の民主主義がある」と発言した。日本に民主主義は二つあるのだろうか。辺野古新基地計画に関しては軟弱地盤があることがわかり、予算および工費は大きく膨らんでいる。

 

2019年3月に46都道府県知事へのアンケート結果も示された。「県民投票の結果を日米両政府は尊重すべきか」に対して「すべきだ」と答えたのは2県知事(岩手、静岡)にすぎず、大半は無回答だった。同年元山さんは居住する国立市で辺野古新基地建設即時中止を求める意見書を提出し、8月市議会で採択された。ヤマト・本土の人に向けて、県民投票・基地問題のことを周りに知らせる、沖縄の新聞を購読するなどのほか、居住する市町村でこのような意見書の採択を議員に働きかける(小金井市・小平市・文京区・三鷹市・岩手県などでも可決)ことを呼びかけている。

 

最初に4つの問いを挙げたとき、米軍基地が身近にない人々には意思表示をしても聞いてもらえない、この国の民主主義について不信感・やるせなさを抱いていると語っていた。また、当時の政府側意見も紹介していた(森本元防衛大臣:西日本のどこかであれば海兵隊は機能するが政治的に許容できるところが沖縄しかない。中谷元防衛大臣:理解してくれる自治体があれば移転できるが米軍反対とかいうところが多くてできない。柳澤元官房副長官補:沖縄は中国のミサイル射程内に軍事拠点が集中しており非常に脆弱だ、ピンポイントで沖縄でなくてはならない軍事的合理性はない。安倍元首相:本土の理解が得られない)。 はじめに掲げられた問いは、私たちに投げかけられているのである。なお、質疑応答で「沖縄は基地で食べている」に対してはそれを否定する資料も示された(「よくある質問 問13」県ホームページ、18年)。(幸)



【イベント詳細】2020連続講座「いま、動き出すために」


講師

2021年3月13日(土)10:15〜12:15

「『辺野古』県民投票の民意とこれから」元山仁士郎さん(「辺野古」県民投票の会元代表)

形式

オンライン(zoomウェビナー)

参加費

無料

定員 40名(要予約)

【講師メッセージ】昨年2月24日に行われた「辺野古」県民投票。同投票では、国が普天間基地移設のために進める辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否が問われ、反対が72%を占めました。それにもかかわらず、政府はその翌日から埋め立て工事を強行しています。日本にとって沖縄とは何か、この国に"民主主義"はあるのか、沖縄のために私たちができることは何か、一緒に考えられればと思います。

【プロフィール】1991年、宜野湾市生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。現在、一橋大学大学院法学研究科博士課程。SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)、SEALDs、SEALDs RYUKYUの立ち上げ/中心メンバー。2018年4月から大学院を休学し、「辺野古」県民投票を実現する「辺野古」県民投票の会の代表を務めた。