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2021連続講座「女性の権利を国際基準に!〜個人通報制度が使えたら」講師:浅倉むつ子氏(早稲田大学名誉教授・女性差別撤廃条約実現アクション共同代表)

 世界経済フォーラムによる日本のジェンダーギャップ指数は、世界156カ国中120位(2021年)にとどまり、とりわけ政治分野が劣る。それは有償労働と無償労働のジェンダー格差が大きいという日本社会の特徴を反映する。しかも、コロナ危機は女性により大きな打撃を与えており、コロナ後の世界を見据えて「ジェンダー平等」を実現していかなければならない。

 女性の権利を国際基準にするためには、国連・女性差別撤廃条約(1979年採択)の選択議定書(1999年採択)の批准が求められる。日本は、1985年にこの条約を批准したが、条約の実効性を強化するための付属文書である選択議定書をいまだに批准していない。条約を批准しながら選択議定書を批准しないのは、法律は作るが守らないというに等しい。

 女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、この条約の履行を確保するために設置され、①国家報告の審査、②一般勧告の作成、③選択議定書に基づく活動、を行う。

国家報告制度により、締約国に義務づけられた報告書をCEDAWが審議し、「総括所見」や「評価」を出す。日本は第8次報告まで提出し、5回の審議を受けた。しかし、201812月にはCEDAWから「評価」文書が通知されたにもかかわらず、2021年3月まで外務省から内閣府(男女共同参画局)へ知らされず、国民にも公表されなかったため、第5次男女共同参画基本計画(202012月策定)に反映されなかったとみられる。締約国との建設的な対話を進めようとするCEDAWに対する日本の姿勢が問われる。CEDAWが日本に対して2年以内の報告を求める「フォローアップ」2項目(2016年)は、夫婦別姓などに関する家族法の改正と、マイノリティ女性差別についての措置である。

特定の国に対してではなく、締約国全体に向けた「一般勧告」は、女性差別撤廃条約が採択された時点では十分に盛り込めなかった課題や新たな問題について、条約を補うために作成されてきた。2018年までに37勧告が出されている。

選択議定書は、個人通報制度と調査制度を定めるが、いずれも、この議定書を批准した国しか利用できない。個人通報制度によって、締約国において権利を侵害された個人または集団は、CEDAWに救済を申し立てることができる。受理されるには、国内救済手続きを尽くすこと(最高裁判所の判決確定後)が条件である。CEDAWは、受理した件について、条約違反があったかどうか検討し、差別があったという結論に達すると、国に対して「見解・勧告」を出す。法的拘束力はないものの、2021年2月までに40カ国165件の通報があり、うち41件について条約違反を認定した。調査制度は、重大または組織的な侵害があったという情報を受けた場合にCEDAWが調査を極秘で行い、「意見・勧告」を出す。これまでにいくつかの事例がある。

 CEDAWは日本政府に対して選択議定書の批准を繰り返し要請してきたが、「真剣に検討を進める」という回答に終始している。しかし、選択議定書の批准については、最近、国会質疑において度々取り上げられているばかりでなく、地方議会からの「意見書」も、2001年以来、40件に上る(府県議会レベルでは、高知、島根、徳島、富山、宮城、大阪など)。こうした動きは政府としても無視できないはずであり、地方議会からの働きかけ、地方議会への住民からの声が、政治を動かす力になる。

 

 国際的な場で日本の人権問題が審議されることを「非難」として受け止めるべきではない。国際条約が直接的に国内の問題に適用されるわけではないが、批准されれば、司法判断に国際条約の精神が活かされる。選択議定書の批准は、日本が人権を尊重する国であることを世界に向けて発信するとともに、ジェンダー平等社会の実現につながる大きな一歩になるといえよう。(眞)



【イベント詳細】2021連続講座「進めたい「いま」、弾力ある社会へ」

講師

2021年5月8日(土)13:30〜15:30

「女性の権利を国際基準に!~個人通報制度が使えたら~」浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授)

形式

オンライン(zoomウェビナー)

参加費

1,100円(税込)

定員 50名(要予約)

【メッセージ】日本は1985年に、国連の「女性差別撤廃条約」を批准しましたが、条約の「選択議定書」を批准していません。選択議定書とは、各国に条約内容を実行させるための文書で、もし批准すれば、国内で権利救済されなかった人が国連の「委員会」に通報できるようになります。個人通報が可能になれば、国内の裁判所も条約に即した判断をするようになるでしょう。ジェンダー平等を実現するこの方策について、ご一緒に学びませんか。

【プロフィール】早稲田大学名誉教授。女性差別撤廃条約実現アクション共同代表。労働法・ジェンダー法専攻。博士(法学)。日本労働法学会代表理事、ジェンダー法学会理事長を歴任。著書は『労働法とジェンダー』(勁草書房、2020年)、『雇用差別禁止法制の展望』(有斐閣、2016年)など多数。