中島さんはNPO法人レジリエンス(後述)の代表を務め、暴力・トラウマについて各地で研修や講演を行っている。
初めに、“星さん(☆さん)”という言葉を紹介する。「サバイバー・被害者」には偏見やレッテル貼りが伴うからで、一人一人が異なる自分らしさ“輝き”を持っている存在として捉えている。性暴力の被害者には女性が多いが、それだけではない(例:子どもへのDVやいじめにも)。加害者の多くは知っている人、身近な人で、家族内でも起こっている。性暴力は犯罪である。しかし、正確な統計として上がってこない。なぜか。☆さんは誰にも話していない、話せなくなっている。訴えれば、「逃げようとしたか?」「抵抗したか?」「助けを求めようとしたか?」と疑われる。こうした社会を変えなければならない。重要なのが「コンセント(同意)」の概念である。コンセントには自由な意思が不可欠で、それがない場合はレイプと見做される。つまり、積極的なYES以外は全てNOである。自分の身体は自分のものであり、この性的自己決定権は誰でもが持っている権利である。
加害に直面した☆さんは殺されるかもしれないと恐怖を覚え、動けない、逃げられない。危険を感知してストレス性ホルモンが出され、巨大なストレス=トラウマに陥る。トラウマは体に埋め込まれ言語化が難しく、そこから脱出するため解離(健忘、現実感喪失、離人、解離性同一性障害)が起こる。また、性暴力は☆さんに恥(自分は生きる価値がない、尊厳の喪失、嫌悪感)をもたらす。自分の存在を恥と思うのは危険なことである。
では、解離の中にある人はどう回復するのか。希望のヒントは人の繋がりの中にある。自分を思い、話を聞いてくれる人の存在が大事である。中島さんは自らの被害体験と回復への過程を語った。「自分では解離と思いたくない、解離ではないと。自らを認められず、鬱がひどくなった。その時にセラピストが『何て悲惨な…』と言うのではなく、『サバイバルしてきたのはすごい』と受け止めてくれた」と。☆さん自身の意見を尊重し、誰も傷つけないサポートの仕方について他の具体例も示された。
最後に、レジリエンス(Resilience)とは、英語で「さまざまな形の力」を意味し、どのような逆境に置かれても耐え抜く力、そこから脱する力、新しくエネルギーを発揮する力、マイナスのものをプラスに変えていく力などを指すと説明があり、同NPO法人の活動の紹介があった。ご自身の体験にも触れながらの講演で共鳴、共感を生んだ。(幸)
【イベント詳細】2021連続講座「進めたい「いま」、弾力ある社会へ」
講師 |
2021年11月13日(土)13:30〜15:30 「性暴力:その後を生きる」講師:中島幸子さん(NPO法人レジリエンス代表) |
形式 |
オンライン(zoomウェビナー) |
参加費 |
1,100円(税込) |
定員 | 50名(要予約) |
【メッセージ】性暴力は複雑で重いテーマのため、日常で会話にあがってくる話ではありません。しかし、実は多くの人が経験している重要なテーマです。性暴力と聞くと、知らない人からの一度だけのもの、というイメージがありますが、知っている人から何度も被害にあうという形のものも非常に多く起きています。全ての性暴力の被害者の方々が適切な支援を得られ、二次被害を受けることのない良い支援やサポートを増やしていく必要性があります。この講座では性暴力が被害者や周囲の人にもたらすトラウマや影響について説明します。
【プロフィール】NPO法人レジリエンス代表、米国法学博士、社会福祉学修士 。2003年、「レジリエンス」を 結成、暴力の影響を理解しトラウマに対応する方法を学ぶための「こころのcare講座」をスタート。当事者としての視点と支援者としての経験を踏まえ、毎年、DVや性暴力被害、トラウマの影響、解離、被害者支援に求められることなどをテーマに、全国各地で多数の講演を行う。