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オンライン講座・私の市川房枝論 「地域・国際社会の視座から考える」講師:井上直子さん(足利大学ほか非常勤講師)

井上直子さんは第34回「市川房枝女性の政治参画基金」(2016)の助成を受け、主に婦選獲得同盟地方支部の研究をしてきた若手研究者である。20年に一橋大学大学院で博士号を取得し、足利大学などで非常勤講師をしている。今回の講座は、地域を中心としたこれまでの研究に基づき、さらに世界にも視野を広げて市川房枝論を検討するという試みである。

 

市川房枝は婦選獲得同盟で地域の活動を重んじ、各地の支部活動を支援した。例えば1930年、広島支部ができた時に役員を連れて市役所で市長に面会し、市議や県議とも話し合う機会を持っている。一方、2度の渡米経験(192128年)で、海外の女性参政権運動の歴史と参政権獲得後の政治行政への参加(地域政治も含む)、政治教育のあり方に関心を寄せた。27年には国際婦人参政協会に加盟申し込みをするなど、国際団体にも積極的に参加した。

 

講演や執筆活動によって英米を中心とした情報をアウトプットし、31年には京都支部から、英米の先輩の苦労を知って勇気づけられたという声も上がった。32年、東北婦選大会で市川は英国総選挙ポスターを示し、女性と生活が重視されていることを説いた。このパネルでは母と子、家庭と台所などが描かれていた。33年に結成した東京支部ではシカゴやバーミンガムの実践を念頭に、ガス値上げや中央卸売市場問題について反対運動を行なった。もう一方で、日本の運動を海外に発信もしている。

 

時局下には選挙粛正運動をはじめとした政府への協力を行いつつ、40年、婦人に関係のある国策に対し批判はもっとあってよい、その決定にはもっとイニシアチプをとる必要がある、と論じていた。同年、訪問した汪政権下の中国では女性の組織化に注目している。41年、隣組の常会では話し合いもなく、上からのお達しを伝えるだけだと批判した。戦時中においても地域社会で実践する女性たちへ関心を持ち続け、女性・子ども・台所を意識した政治の具体化と浄化をめざした。ここに戦後への連続性を見てとることができる。

 

 

井上さんは婦選会館に所蔵されている戦前の史料を詳細に調べ、それに基づき市川の婦選運動を具体的に描き出した。地域と国際社会の視座から、これまでにはなかった「市川房枝論」が明らかにされた。3月現在、ロシアによるウクライナ侵攻という事態に対して、女性参政権に反発する人の多かった時代に女性の政治参加による民主主義を求めて話し合いを続けた市川房枝の姿を知ることができたことも有益だった。これから戦後へと資料探索を進めると聞く。今後の研究に期待したい。(幸)


【イベント詳細】

オンライン講座・私の市川房枝論「地域・国際社会の視座から考える」〈無料〉

この度開催の無料オンライン講座は、第34回「市川房枝女性の政治参画基金」の助成を受け、

婦選運動について研究されている井上直子さんを講師にお迎えします。

より多くの方に「市川房枝」を知って頂く機会として、ご案内申し上げます。


【講師メッセージ】市川房枝は、戦前より講演会への登壇や新聞雑誌への寄稿等を通して日本各地に民主主義の種を蒔き、各地で出会った人びととともに育ててきました。その際、市川が意識して発信したひとつが世界での女性参政権獲得運動、そして参政権を獲得した女性たちがいかに権利を行使し政治参加の問題に向き合っているかという点でした。

今回の「市川房枝論」では、市川が海外の女性たちの運動を念頭に地域社会の人々と共有しようとした政治参加のあり方を考えます。

日時 2022年3月16日(水)13:30~15:30
形式

オンライン(zoomウェビナー)

※画面に参加者のお名前や顔、声が登場することはありません。

講師

井上直子氏(足利大学ほか非常勤講師)

参加費

無料

定員 100名(要予約、受付先着順)
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