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2022連続講座「パンデミック監視資本主義 ―デジタル庁とマイナンバーの行方」講師:小笠原みどりさん(ジャーナリスト、社会学者、カナダ・ビクトリア大学教員)

監視資本主義への警鐘―顧客は企業、市民は情報提供者というシステム

 今年度連続講座「政治を揺り動かすーひとりひとりの「当たり前」を実現できる社会へ」第3回が小笠原みどりさんを講師に迎え、実施された。

小笠原さんは、ジャーナリストで、デジタル監視社会の研究者。アメリカ国家安全保障局による世界監視システムを告発したエドワード・スノーデンに日本人ジャーナリストとして初めてインタビューしたことで知られ、民間企業と連携した政府の個人情報収集システムに警鐘を鳴らす。2021年よりカナダのビクトリア大学社会学部で教鞭を取っており、一時帰国のタイミングで本講座の講師に迎えることができた。

 当日は奇しくも選挙演説中に元総理が銃により死去した翌日であり、新型コロナ感染再拡大も重なり、デジタル社会のメリットとリスクを実感しながらの受講となった。参加者は約50名。

 

 概要:新型コロナ感染の拡大防止を理由に「パンデミック監視」として、各国政府が大量の個人情報を入手し、個人の動向を追うことが可能になった(携帯電話の位置情報を通じた感染者の移動追跡など)。普段なら許されないことでも、危機的状況だと判断されると許容される事態はショック・ドクトリン(=惨事便乗型資本主義。ナオミ・クラインによる命名)で説明できる。スマホやアプリを使った監視が一気に広がり、デジタル監視は教育分野でも拡大している。

 国民総背番号制、住基ネットからつながるマイナンバーが、「行政効率化」と「国民の利便性向上」を掲げて推進される一方、4月には警察法改定により警察庁サイバー警察局が創設されており、プライバシー保護の枠組みが確立しないままデジタル監視が進む。個人情報の目的外使用の危険性はジャーナリストや市民運動にも迫っており、民主主義への脅威となることに敏感である必要がある。

 

 スマートフォン利用が、企業への個人情報提供に直結していること(デジタル資本主義)、使用者にとってデジタル化にはメリットのみならずデジタル監視によるリスクがあることを学び、これを伝える大切さを痛感させられる内容であった。参加者には地方議会議員も多く、地方自治体に対しマイナンバー推進を求める財政圧力があるとの報告や意見、関連質問が多くあり、時間が足りないほどだったことも加えておく。(国)



【イベント詳細】2022連続講座「“政治”を揺り動かす」第3回

講師

2022年7月9日(土)13:30〜15:30

「パンデミック監視資本主義 ―デジタル庁とマイナンバーの行方」講師:小笠原みどりさん(ジャーナリスト、社会学者、カナダ・ビクトリア大学教員)

形式

オンライン(zoomウェビナー)

参加費

1,100円(税込)

定員 50名(要予約)

【講師メッセージ】私たちがスマホなどのデジタル画面と向かい合う時間は、パンデミックを機にほぼ倍に伸びています。政府、企業はオンラインでのコミュニケーションやショッピングを薦めますが、インターネットは個人の行動を追跡する監視の場でもあります。企業と政府は集めた個人情報を何に使い、社会をどう変えようとしているのか。マイナンバーとデジタル庁のねらいを知り、情報への権利について考えます。

【プロフィール】朝日新聞記者として住民基本台帳ネットワークなどデジタル監視問題について報道後、カナダ・クイーンズ大学大学院で日本の近代監視制度についての論文で社会学博士号を取得。アメリカ国家安全保障局(NSA)の世界監視システムを内部告発したエドワード・スノーデンに日本人ジャーナリストとして初のインタビュー。著書に『スノーデン・ファイル徹底検証』(毎日新聞出版)など。