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政治参画フォーラム「誰も置き去りにしない社会を!」

◆講演「医療保険制度の現状と課題」 西沢和彦氏(日本総合研究所 調査部 主席研究員)

 第二次世界大戦後における日本の社会保障は、社会保険制度を中心に据えてきた。負担(社会保険料の拠出)と受益(給付)との関係が明確な社会保険は、権利性とともに、拠出していなければ給付を受けられないという排他性も伴う。そのため、理念として掲げる医療保険についての「国民皆保険」(公的年金については「国民皆年金」)は、もともと矛盾を抱えている。

 1980年代初頭までは、組合健保、政府管掌健保、共済組合、国民健保(国保)の4制度が独立しており、政府管掌健保と国保に制度間格差を是正するための国の公費(税金)が支出されて「皆保険」を成立させようとしていた。しかし、急増する高齢者医療費への対応として導入された老人保健制度が、単なる財政調整の手段となってしまい、今日では「自ら必要な経費を拠出する」という社会保険の理念から大きく逸脱してしまった。とりわけ組合健保からの高齢者支援金(老人保健拠出金の後継)の増額は保険料に跳ね返るため、企業の雇用費用(社会保険料は労使折半)を増やして、正規雇用を減らす要因としても作用する。しかも、特例のはずの赤字国債の過大な累積は、将来世代へ負担の先送りとなる。

 従来、わが国の医療費は国際的にみて低いとされてきたが、日本の「国民医療費」は、OECDなどによる「健康支出」の基準からすれば、その一部をカバーするに過ぎない。例えば、予防接種のワクチン代、保健所の経費、健康診断の費用など、予防や公衆衛生関係の費用は含まれていない。これは「医療費」の認識そのものを誤らせ、「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤」(第一条)とする統計法にも反する。

  2018年度から国保の保険者は、市町村と都道府県との共同とされたが、責任の所在が曖昧になりやすく、主たる責任がいずれにあるのか、財務省と厚生労働省との間でも見解が必ずしも一致しているわけではない。すなわち、市町村を主体とするのか、都道府県中心に運営していくのかという政策姿勢の違いが生じる。国保の保険料を徴収する市町村は、その保険料水準について住民に対する説明責任を負う。その意味で、市町村議会による検討が欠かせない。(眞)


◆基調講演「女性支援新法について」 

戒能 民江氏(お茶の水女子大学名誉教授、女性支援新法の制定を促進する会会長)

◆講演「66年間続いた「売春防止法」による支援とは?~管理から解き放たれて 女性支援はどう変わるのか~」 

横田千代子氏(全国婦人保護施設等連絡協議会会長)


※ なお、戒能民江氏、横田千代子氏については、女性展望1、2月号に執筆頂いていますので、女性展望1-2月号をご覧くださいます様、ご案内申し上げます。

【イベント詳細】


市川房枝政治参画フォーラム2022「誰も置き去りにしない社会を!」

【主催者メッセージ】

2020年1月以来、なお続く新型コロナウイルス感染症によって、私たちの命と暮らしが脅かされ、さまざまな形での疲弊につながっています。そんな中、困難を抱える女性たちの人権を守るための「女性支援法」が成立しました。自治体には、新法の意義を生かし政策に反映させることが求められます。

また、コロナ禍における医療保険の重要性が増すなか、公的医療保険制度の現状と課題について、新法と併せて学びます。ご参加をお待ちしています。

日時 2022年10月23日(土)10:00~16:15
講師

▽基調講演女性支援新法について

 戒能民江氏(お茶の水女子大学名誉教授、女性支援新法の制定を促進する会会長)

▽講演66年間続いた「売春防止法」による支援とは?

~管理から解き放たれて 女性支援はどう変わるのか~」   

 横田千代子氏(全国婦人保護施設等連絡協議会会長)

▽講演医療保険制度の現状と課題西沢和彦氏(日本総研調査部主席研究員)

参加費

現職議員12,000円・現職議員以外5,000円

(音声(CD)受講有り:1コマ3,000円+送料)

定員 約25名(要予約、受付先着順)
申し込み方法 フォーム、メール、FAX、電話でお申し込みください。