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2022連続講座「消費税率25%に国民が納得している国の主権者意識」鈴木賢志さん(明治大学国際日本学部教授・学部長、 一般社団法人スウェーデン社会研究所 代表理事・所長)

 北欧諸国は、高福祉高負担の福祉国家として知られている。スウェーデンの消費税の特徴は軽減税率が広く認められていることである。一般消費税は25%であるが、食料品は12%、文化事業は6%、医療サービスや福祉サービスは0%となっている。相続税を廃止する際には、国民がセーフティネットを信頼していることもあり、議論はほとんど起きなかった。

 

 スウェーデンにおける20229月の国政選挙投票率は84%だった。OECD加盟国38カ国の国政選挙投票率(20223月時点)をみると、上位8カ国中3カ国が北欧であり、スウェーデンは4位で、日本は30位。オーストラリア(1位)、ルクセンブルク(2位)、ベルギー(3位)、トルコ(5位)は義務投票制度が存在している、あるいは存在していた国である。国会を信頼している人の割合も北欧は高く、日本は低い。国会の信頼度が高い国は、政府歳入の割合(主に税収額を各国の経済規模に比したパーセンテージ)が大きいという相関関係が見られる。北欧で国会が信頼されている理由として、国の社会システムがうまく機能していることと、子どものうちから主権者意識を高め、自分たちの意見が国に反映されていると思えることが挙げられる。

 

 スウェーデンは、教育費は全て無料である。貧しいために大学に行けない、子どもがいるために働きにくいといった個人の不幸は、社会にとっての損失であるという考えがある。教育を受けて自分を磨き、高い経済力をつけ、高税収・高福祉サービスの供給につながる循環型の社会モデルは、北欧の経済と個人を豊かにしている。

 

日本の若者は政治について学ぶ機会が少ないが、スウェーデンでは、幼少より主権者意識が育まれており、投票に行くことが当たり前となっている。例えば社会科の教科書には、世論を形成し、政策決定に影響を与えるための方法として署名集めや地方新聞への投書、デモ、政治家へ連絡することが記載されている。また、主権者意識をベースとして勉強を位置づけており、社会に影響を与えるためには、識字、表現、分析といった知識が必要であると説いている。実際の選挙の約1カ月前に、中学生および高校生を対象として実施される学校選挙では、実際の投票用紙がそのまま用いられる。投票結果は全国で集計され、実際の選挙結果速報と同時にメディアで報道され、将来の有権者の動向を知る意味でも注目を集めている。

 

 日本にも主権者意識を現状よりも高める方法はいろいろある。(東)



【イベント詳細】2022連続講座「“政治”を揺り動かす」第7回

講師

2022年12月10日(土)13:30〜15:30

「消費税率25%に国民が納得している国の主権者意識」

鈴木賢志さん(明治大学国際日本学部教授・学部長、一般社団法人スウェーデン社会研究所 代表理事・所長)

形式

オンライン(zoomウェビナー)

参加費

1,100円(税込)

定員 50名(要予約)

【講師メッセージ】スウェーデンをはじめとする北欧諸国は、高福祉高負担の福祉国家として良く知られています。その消費税は何と25%。租税や社会保障の負担も非常に重いです。にもかかわらず、かの国々では税金が高いと思っている人はあまりいません。彼らは、税金の使われ方に不満があれば、それは自分たちの力で変えられるものと信じています。そんな彼らの主権者意識がどのようにして育まれているのか、講義を通じてお伝えできればと思います。

【プロフィール】1992年東京大学法学部卒。97年から10年間スウェーデンのストックホルム商科大学欧州日本研究所で研究・教育に従事し、オックスフォード大学客員研究員を経て2008年に帰国。専門は日本と北欧の社会システムの比較研究。