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2019連続講座③ 使い捨てプラスチックと海洋汚染 講師:高田秀重さん(東京農工大学教授)

講師の高田秀重さんは東京農工大農学部環境資源学科教授で、専門は環境中の合成洗剤、医薬品、抗生物質、PCBなどの人工化学物質の分布と輸送過程の解明。1998年からプラスチックと環境ホルモンの研究を開始。2012年から国連の海洋汚染専門家会議のマイクロプラスチックのWGメンバーである。プラスチック汚染の現状と問題点、環境面と対策を考えていきたいと、多くのスライドを使って解説した。

 

マイクロプラスチックとは大きさ5ミリ以下のものを言い、量的に最も多いものはプラスチック製品の破片、化学繊維(洗濯くずも)、マイクロビーズ(洗顔料など化粧品類)、野外プラ(人工芝)等々である。プラスチックのうち半分がレジ袋、弁当箱等の使い捨てプラスチック。家庭ではリサイクルごみとして収集され、あるものはリサイクルされ、あるものは処理されるが、ポイ捨てやごみ箱から溢れたものが環境中に出て、雨で流されて河川敷に溜まる。しかし最も多いのはペットボトルで、日本では毎年227億本消費され、そのうち88.8%が回収され、11.2%(25億本)が未回収だという。

 

川から海に入ったプラスチックは微生物によっては分解されないので、水に乗って遠くまで流れることがプラスチック汚染の特徴で、ハワイ島にも流れ着いている。ラベルからわかるのは日本語、中国語、ハングル。日本のプラごみがハワイに流れる一方で日本に流れ着くものもある。黒潮にのって南の中国や韓国から漂着する。このように加害者にも被害者にもなるという現実があり、みなが当事者意識を持たなければいけない問題である。

今、50万トン、50兆個以上のプラスチックが世界の海を漂っている。黒海、地中海、中東、インド、東南アジア沿岸、ユーラシア大陸湾岸。一方でインド洋、大西洋の真ん中で海流や風の影響でものが溜まりやすい海域にも多い。日本周辺には世界の他の海域よりも30倍位多く、これは日本が大量に使っていることと、日本に海流(黒潮)によって東南アジア、中国南部等の消費量の多い国から流れてくることによる。日本でリサイクルされているのは10%で、大量のプラごみをこれらの国に輸出しており、輸出したごみが輸出先の国で溢れて、それがまた海流によって日本周辺までブーメランのように戻ってくる間に、マイクロプラスチックになっている結果だ。これを変えるには我々が使い捨てプラごみを減らしていくことが必要で、単にリサイクルボックスがあるからたくさん使ってもいいという問題ではないと述べた。

 

海にプラごみがあると何が起こるか。海の生物が餌と間違えて食べてしまう。プラごみを摂取してしまった海鳥や魚や貝たち。タイのクジラの胃の中から80枚のレジ袋が見つかり、コスタリカの海ガメの鼻にはストローが刺さっていたとも報告されている。さらにマイクロプラスチックから有害化学物質が生物に移行・蓄積することの調査結果もある。有害化学物質が人間に取りこまれた時に起こる環境ホルモンの影響も憂慮されるという。

何も手を打たなければ、海に流入するプラスチックの量は、20年後には10倍に増加し、海洋プラスチック汚染が深刻化する。海洋プラスチックは生態系を壊さずに除去することが出来ないから、プラスチックを海に入れないことが重要である。国際的には予防原則の立場から対策が進められている。海のプラスチック汚染の問題について2011国連環境計画の年鑑に取り上げられ、16年国連の海洋法に関する協議、17年国連海洋会議でも話し合われて重要な課題と認識され、使い捨てプラスチックの使用自体を減らすという行動提起が行われた。18年カナダでのG7で承認された「海洋プラスチック憲章」は、使い捨てプラスチックの大幅な削減とリユースを提唱したが、アメリカと日本は署名していない。

 

海のごみを減らすためには先ず陸の廃棄物処理をしっかりすることだ。日本ではプラスチックごみの71%が、都市ごみの73%が焼却されているが、焼却炉の建設や運転費用は膨大なものであり、多くの問題を抱えている。一方、リサイクルにも限界があり、リサイクルのコストはリサイクルして出来た製品による利益よりも大きい。先ずは使い捨てプラスチックの使用量を減らすこと、次にリサイクルしやすい商品や包装にすること。

我々市民が出来ることは「3R Reduce(削減) Reuse(再使用 Recycle(リサイクル)」だが、個人の努力だけでは限界があり、業界の努力や政府・行政の対策が必要である。市民の意識啓発だけでなく業界の取り組みやその枠組みを作ることだ。2019年3月に国が決定したプラチック資源循環戦略には、レジ袋の有料化等のアクションプラン、回収、適正処理については書かれているが、使い捨てプラスチック削減の具体策は書かれていない。個人ができることは3Rの中の削減に力を入れて行くこと。マイバッグ、風呂敷、マイボトルを持ち、ストローは断るなど、自分の暮らしを見直すことも大事だと語った。(八)