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連続講座③「地方議会の役割は何か―住民自治を取り戻すために」講師:江藤 俊昭さん(山梨学院大学教授)

 講師の江藤俊昭さんは山梨学院大学法学部教授で、地域政治論が専門。総務省地方制度調査会委員、全国町村議会議長会委員等を歴任し、各地の議会アドバイザーも務める。

 はじめに来年の統一地方選を視野に、あるべき地方議会、地方議員の役割を市民として考えたいと述べ、「議会役割を再確認しよう」「議会改革の今」「さらなる住民自治へ」のテーマで、各地の地方議会の事例を紹介しながら詳述した。

 議会は住民自治の根幹であり、議会改革は、議員間討議を重視し、首長などと政策競争をする議会、閉鎖的ではなく住民に開かれ、ともに歩む議会を目指すものである。議会基本条例は現在、自治体の約4割で制定されており、長野県の「飯田市議会における1年間の流れ」を例に、この中の議会報告会での「問題発見」は、自分たちの地域の問題を住民の側から発見しようという視点であり、議会改革は住民の福祉向上に繋げることがポイントであると述べた。

 議会から住民に示すべきことは、総合計画を作成し、それをどのように実行していくか、議会がどう動くかという政策サイクルであり、その成果は自己評価、外部評価、選挙等で評価されるものである。一方行政への住民参加は、議会報告会や「議会だより」のモニター制度、政策サポーター制度などを通して議会全体について学び、議会の応援団となることができるとし、この中から選挙に立候補する住民が出てくる可能性も指摘した。

 最後に、議会改革は地域民主主義実現のためであり、その新たな条件整備は将来立候補し議員活動がしやすい条件としても考えなければならないとする。また議員定数と議員報酬問題については、議員間の討議が可能な人数を1委員会に7~8名とし、7~8名×委員会数が定数として必要だと述べ、報酬は議員の活動量を示さない限り額は出せないと、「議員報酬のあり方に関する検討会中間報告」(全国町村議会議長会、2018.3)の結果から語った。

 議員のなり手不足問題については「議会・議員の魅力(ならない要因)」、「議会・議員の活動条件(ならない要因)」、「地域力(なれない要因)」にわけて分析し、それぞれ解消の方向と今後の課題を示した。

 この講座は、同日朝から開催の「2019統一地方選直前セミナー」のプログラムに組み込んで行われた。