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2019連続講座① 災害の時代における減災と復興のあり方 講師:室崎益輝さん(兵庫県立大学大学院名誉教授)

講師の室崎益輝さんは京都大学建築科卒。神戸大学教授、消防研究所理事長、関西学院大学教授、兵庫県立大学大学院教授を経て現在同大学院名誉教授、復興政策研究科長を務める。

 

本講座の前日に起こった九州・宮崎地方の地震に触れつつ、南海トラフ地震はいつ起きてもおかしくない段階にあり、明日地震が起きても命を守るために何をしなければならないかを考え、できることから始めることが必要だと口火を切った。

 

2018年6月の台風21号は関西空港付近で風速60mの風が吹き、地球の温度が上がっていることを、同9月の北海道胆振東部地震では日本の山が非常に壊れやすくなっているという山の危険を教えてくれた。これは林業などの第1次産業を粗末にしてきたことも一因だ。 

過去の大災害は減災や復興に繋がる不偏的な教訓を提起している。関東大震災(1923)の教訓は「油断大敵、用意周到、臨機応変」だった。「油断大敵」は危険を正しく理解すること、「用意周到」は事前の取り組みが重要であること、「臨機応変」は想定外に備えることだ。阪神大震災(1995)はインフラの復興だけでなく、人間復興、生活復興が大事であること、一人ひとりが自立していけるように考えることが重要だと教えた。さらに「7(自助):2(共助):1(公助)の原則」が唱えられた。災害時に行政の力は期待できないので、自助でやるようにということだが、では行政は何もしなくてよいのか? 我々はここまでやるから行政はここまでやってほしい、一緒にやろう、というように進めないと、巨大災害に対抗できない。

 

「減災」という言葉は阪神大震災以降に使われ始めた。大自然に対して人間は小さな存在なので、巨大な災害が起きた時には防げない。自然と折り合いながら、ある程度のリスクは認めながら、人間としてできることがあればやり、もっと豊かな社会をつくるという発想で考える。被害をゼロにしようと思わず、少しでも減らそうと努力する。「減災」は対策の足し算で、被害の引き算をはかることだ。足し算には時間、空間、人間、手段の4つがある。実践的な家具の転倒防止や、津波の誘導避難、家屋の耐震補強対策など。

人間の足し算は連携と協働だ。自助と公助は対等であり、その間を埋める共助は最終的には地球全体で助け合うものだ。共助は災害が起きてからではなく、普段からの人間の付き合いが大事だ。国際関係も同じで、他国の人たちのことを親身になって考え、正しい関係を普段から築いておく必要がある。災害の時に他国の支援がなかったら、日本の外交の真価が問われるだろう。

連携の前提には自律がある。企業と行政、コミュニティ、NPOの4者が対等な立場で繋がるような社会をつくっておかないと、本当の意味での助け合いは生まれない。

時間の足し算は出来るだけ早く立ち上がれるようにすること。時間がかかればそれだけ苦しみは大きく、関連死も増える。復旧・復興の仕組みを抜本的に変えるべきだ。 

復興とは生きる力を取り戻すこと、希望が取り戻せる社会をつくること。自立、安全、変革が災害復興の基本目標であり、そのいずれが欠けても復興とは言えない。人間の復興には「医・職・住・育・連・治」の6つの課題がある。「連」は繋がり、絆、環境共生。「治」は自治、ガバナンス。これらの課題の総合的実践の中で「生命・生活・生業・生態」「自立・自由・自治」を獲得することが人間復興だ。

避難所や仮設住宅は関連死、コミュニティ崩壊を招き、住宅再建の戦略と政策の誤りだ。