▼1日目(1/24)
「私の議会レポート 災害にどう向き合ったか」
阿部和子さん(栃木県日光市議会議員)
台風19号により栃木県では4人亡くなり、被害額は487億円超と観光産業に打撃があった。10月末に佐野市で開催予定だった日本女性会議も中止となった。
日光市は、人口8万人、1500k㎡弱と、市では全国3位の広さ。災害対策本部が立ち上がり、自らも近隣や福祉施設を巡回し、議会事務局などから情報収集。被害発生後、福祉施設は民間であることを理由に災害ボランティアが派遣されなかった。この問題については9月議会の一般質問で取り上げた。
日光市には、5つのダムがあり、今後も防災減災対策が必要。イタリアでは、国家安全省よりトイレ・キッチンカー・テントベッドがすぐに届くことから日本にもこのような政策が必要との提言があった。
田村みさ子さん(東京都日の出町議会議員)
日の出町の人口約1.7万人、28k㎡人、7割が森林で橋も多く、台風19号では孤立地域が発生したが、人的被害はなかった。フォーラム開催中の1月末になっても災害対策本部が設置されているが、2018年策定の災害時保健活動マニュアルにより対応している。
孤立地域では、住民の協力により迂回路や掲示板設置、土砂の撤去などを行った。自衛隊による支援物資の搬入や都知事の視察があった。大雨対策も重要で、地域差の解消や避難体制づくりの必要性を感じた。避難所の受付が手書きで大変なのでスマホで対応できないか、また処方薬を持たずに避難する人が多いことには、薬を写真で撮って携帯するようにしたらどうかなどの提言があった。
今回の経験を通して、「我が町は大丈夫」から「我が町でも災害が起こる」と意識を変え、備えるべきであると語った。(正)
講演「消費税増税後の自治体財政ー社会保障は充実するのか」
菅原敏夫さん(公益財団法人地方自治総合研究所委嘱研究員)
講師は(公財)地方自治総合研究所の菅原敏夫さん、2020年度の自治体予算をどのような「手順」で考えればよいのか、その道筋を示された。また、2020年度の大臣折衝と地方財政対策についても熱いお話を伺った。
1.手の内 予算編成過程
国会では3月末に予算案が通過すると次の予算編成が始まる。
➀3月、4月~6月には自治体の予算編成に不可欠な法・法改正が行われる。アンテナを高くし注意が必要。
②7月~12月には、国においては「予算編成方針」が閣議決定される。自治体で言えば「予算編成方針」にあたる。予算編成過程を公表しない自治体もあるが最低限議会で議論する必要がある。自治体では7月~9月は、自治体の決算調整が本格化する。決算は予算の出発点という目で見ることが重要。7月から8月にかけ監査委員による監査が行われる。議会は議会の持っている監査機能を自覚すべき。とりわけ内部統制、監査基準という新制度がスタートする2020年は大事な年だ。9月議会では補正予算が審議される。本予算のすきを突いたものや本予算を先取りし既成事実化を図るものではないか要注意。
③8月~12月、国の場合は各府庁が予算原案を取りまとめ財務省に提出し、財務省は査定に入る。自治体も基本的仕組みは同じだが、その後の予算編成過程の透明度は低い。12月、国は政府予算案の前に収入の枠組みを決める「税制改正大綱が」が「与党」によって決定される。与党税調は「租税特別措置法」を作り国会で通す。きわめて政治的な過程である。政府予算案の決定の最終段階は財務大臣と各府庁大臣との折衝によって決まり、政府予算案が発表される。政府予算案の発表と同時に総務省は地方財政対策(地財対策)を公表する。これは政府予算案の自治体関連の予算の取りまとめといわれ、この枠から自治体財政は逃がれられない。
④1月には、政府予算の公表と同時に全国の都道府県、政令市の財政担当者を集めた総務省の会議が開催される。自治体においても予算案をまとめて、会派説明や内示を経て予算審議が始まる。
2.大臣折衝と地財対策
12月18日高市総務大臣は麻生財務大臣との大臣折衝・地方財政対策関係記者会見を行い、「地財対策は一般財源総額をしっかり確保したうえで、地方交付税総額を増額し、臨時財政対策債の発行を額の抑制を図った。地域社会再生事業費(仮称)の創設、緊急浚渫推進事業費(仮)の創設、災害防止・国土保全機能強化、森林環境譲与税を前年の200億円から400億円に倍増、会計年度任用職員の人件費の財源確保、都道府県等の技術系職員増員と大災害時中長期長期派遣を確保する経費、予算重点項目として、「ローカル5G」の実現に向けて、「グローバル量子暗号通信網構築の予算確保をした」ことを報告した。菅原先生は「例年に比べ随分あっさりしたもので、懸案が少ないことを指摘し、消費税増税、森林環境税も始まった。偏在是正という名目で富裕団体から収入を引きはがしてみんなに配ることもやっている。収入がたくさんあるうちは問題は顕在化しない。しかし、足元の景気はぐらついている中期的には問題がある」と述べられた。(ぶ)
▼2日目(1/25)
カレントトピックス「日本の政治を問う ―国会は今」
佐藤 千矢子さん(毎日新聞大阪本社編集局次長)
はじめに、政局の現状と行方について、安倍1強下に政権の緩みが見られ、森友・加計問題から「桜を見る会」、IR汚職に至るまで様々な不祥事が続くことを指摘した。安倍政権は、消極的支持と低投票率によって支えられており、2019年参院選では自公維の改憲勢力で3分の2を維持できなかった。では、衆議院の解散・総選挙はいつか、政治日程から示唆し、ポスト安倍についても予測する。
次に、安倍政権の功罪をあげた。“功”ではスピード感のある決める政治、日米関係の安定、“罪”では国会軽視、少ない議論、政治不信である。官邸は、官僚に対しては幹部の人事権を、自民党内では小選挙区制のもとに候補者の公認権など、強い権力を握っている。これに対して、先の民主党政権の失敗と、野党の内輪もめがあり、政権交代は遠のいている。
不祥事が続き政権に緩みが見られるのに、なぜ緊張感のない国会となっているのか。その背景には、①小選挙区制で政権交代可能な制度になったが、与野党対立の質が変化し、イメージ戦略が重要になった、②調査能力のある議員が少なくなり、行政監視機能が低下し、③審議の形骸化が生じていることがある。
最後に、安倍政権の目指すレガシーとして、憲法改正、日朝交渉、北方領土などいくつかあげ、メディアに関しては政権との距離で二極化が生じているとした。(幸)
講演「膨張が続く国の財政 ―2020年度予算の特徴と課題―」
藤井 亮二さん(参議院常任委員会専門員、予算委員会調査室長)
参議院で財政、経済の調査・分析に携わっている藤井亮二予算委員会調査室長から、2020年度予算の特徴と課題について報告を受けた。
まず、わかりにくいといわれる予算の分析手法について、タテとヨコの視点が重要との指摘があった。予算はタテに(時系列的に)、そしてヨコに(他と比較して)見ると分析しやすい、国の予算は予算編成する内閣の性格を端的に示す「内閣の顔」であるとの説明があった。
続いて、2020年度予算の全体像について説明が行われた。国の予算の中で最も重要なのは、政策の本丸ともいえる一般会計予算であり、2020年度一般会計予算は8年連続で過去最大を更新して102.7兆円になった。背景には消費税対策のための「臨時・特別の措置」1.8兆円の計上がある。
102.7兆円予算のうち社会保障関係費が35.9兆円と3分の1を占める。社会保障関係費は消費税率引上げに伴う幼保無償化など社会保障の充実によって過去最大となった。全世代型社会保障を掲げる安倍政権の下で、通常国会には働き方改革や年金、福祉に関わる法案が提出され、審議の行方が注目される。
防衛関係費も8年連続で増額して過去最大の5.3兆円が計上された。宇宙、サイバー、電磁波という新領域に手厚い配分である。防衛関係費は当初予算に加えて毎年、補正で数千億円が追加される。補正予算の内容として適切か疑問であるとの指摘があった。更に国庫債務負担行為が多用されて後年度へ負担を付け回し、翌年度以降の歳出を硬直化する問題がある。
公共事業関係費は防災・減災、国土強靭化で増加している。当初予算では6兆円程度でありながら、補正で1.6兆円程度が上積みされることが多く、安易な規模拡大が行われている懸念がある。一方、社会インフラの老朽化への対応は緊喫の課題である。
平成の30年間は財政を悪化させた時代である。国・地方の債務残高はGDPの2倍程度に積み上がっているが、低金利のおかげで利払費が抑えられている。金利が急上昇すると、日本の財政は破綻しかねない。
歳入の柱である税収は過去最大の63.5兆円を見込んでいる。しかし、経済成長率1.4%が前提であり、民間見通しの0.5%成長とは乖離している。経済が落ち込めば、新たな国債発行を余儀なくされる。なお、2020年度は消費税収が初めて所得税収を上回る。
財政健全化目標である基礎的財政収支について政府は2025年度の黒字化を目指すが、今年1月の内閣府「中長期の経済財政試算」ではベストシナリオでも黒字化は2027年度である。財政健全化は先送りされ続けている。
まとめると、来年度予算は経済対策で過去最大となり、その財源として甘い見積もりの税収と、かき集めた「その他収入」をやりくりして、国債発行縮減を実現した予算といえる。
▼フィールドワーク(1/24)